もう一つのDX
職場でも家庭でも、「ちょうどいい距離感」というものを大切にしたい。
というのも、家族であっても一人の個人。考え方や趣味嗜好、行動特性もそれぞれだから。
ましてや、職場の上司や部下、同僚とは生まれ育ってきた環境やバックグラウンドも異なる他者。いろんな価値観を持った個人が集まっています。
そんな職場でお互いが気持ち良くいるためには、「ちょうどいい距離感」をキープする気遣いや配慮、言い方を変えると『感情的知性』が必要だと思う。これは何も職場に限ったことではなく、家庭でも必要なんだと思います。
「なんでこの人いつもこうなの??」「なんで分かってくれないかなぁ…」
近すぎると文句の一つも言いたくなり、遠すぎると無関心で人間関係を築くことはできない。
職場のコミュニケーションでモヤモヤ、イライラするのは、自分が大切にしている価値観や信念、こだわりを、相手が分かってくれなかったり、分かろうとしなかったりすることに対する「感情のサイン」です。
職場のパワハラ問題も、実はそうしたお互いの関係性の摩擦が背景にあったりします。
それは、「分かってくれるはず」「分かり合えるはず」を前提にしたコミュニケーションだからかもしれない。「分かってくれる前提」でいると、「なんで分かってくれないの?!」とイライラ感情が発生してきます。
「男性は仕事をして、女性は家事・育児に専念すべき」「あいさつは部下の方からするべき」など「〇〇するべき」といった「無意識の偏見」(アンコンシャス・バイアス)にもつながります。
そうではなく、一人ひとり異なる存在としての「違い」や「分かりあえなさ」というものから始めてみてはどうだろう?
そのためには、まず「相手を知る」ことからはじめたい。
意外と知っていると思っている相手のことって、実は良く知らないもの。
よ~く観察するもよし。ちょっと、聴いてみるもよし。『対話』からはじめたいところです。
予定どおり進まないと「イライラ」してしまう人には、今、どう動くのが最善かを判断するためのフレームワークをお勧めします。それが、「OODA」。
Observe(観察する)⇒ Orient(方向づけ)⇒Decide(決定)⇒Act(行動)
私たちがよく使う「PDCA」とは全くことなるアプローチです。
「そもそも分かりあえない他者」という前提からスタートするので、「なんであの人はあんな行動してるのかな?」「よ~く観察して、情報を集めよう。」(Observe:観察)し、「なるほど、もしかしたら、〇〇と△△が気になってるのかもしれない…」(Orient:方向づけ)し、「だったら、こうしてみようかな」と(Decide:決定)し、(Act:行動)に移してみる。上手くいかなかったらまた(Observe:観察する)というループです。
一見、面倒な感じがするかもしれませんが、多様な価値観を受け入れ共生していくためには、
対話の変革が必要ではないでしょうか。これこそが、もう一つのDX(ダイアログ トランスフォーメーション)です。
寺本 健太郎
TERAMOTO社会保険労務士法人 代表社員
Terrastory株式会社 代表取締役CEO
1974年 島根県松江市生まれ。
スタイリスト、出版社勤務、コンサルティング会社での経験を経て、2014年に地元松江市にて社会保険労務士として独立開業。2016年には個人事務所を法人化し、TERAMOTO社会保険労務士法人を設立。中小企業の働き方改革や人事労務・バックオフィスの支援を行うほか、講演・セミナー・執筆などメディア出演も多数行う。
2022年2月には、地域発のヒューマンキャピタルをベースにした事業会社Terrastory株式会社を設立。
「一隅を照らし、人と組織をエンパワーする」をミッションに、地域の自律型人財の育成やロールモデル企業の支援、新規事業開発に取り組んでいる。