コラム
2020.11.06

イライラ妻には「名もなきねぎらい」を

 この夏、男の子が生まれ、更に賑やかになった我が家。8歳、6歳、4歳、0歳の4姉弟。「賑やか」では済まない日もしばしば...。

 赤ちゃんを抱えての家事で、特に苦労するのが夕飯作り。赤ちゃんが寝ている隙を見て、下ごしらえをして夕飯に備えるも、いざ作り始める夕方になると決まって泣き出したり、授乳に時間がかかったりで、いつもの何倍も料理を食卓に並べるまでに時間がかかる。

 それなのに、ようやく並べた料理を、子どもたちに「えー、ピーマン嫌だ」だの、「ハンバーグがよかった」だの言われた日には、「そんなこと言わないで食べよう」と言いながら、頭の中では、ちゃぶ台をひっくり返し、「お母さんは、赤ちゃんのお世話しながら必死でご飯作ってるんだよー!本当は献立考えることすら億劫なんだよー!」と叫ぶ。

 でも夫はと言うと、メニューが何だろうと関係なく、9割5分、最初の一口を食べて「旨っ」と言い、部活を終えた少年のようにどんどん箸を進めていく。

 そしてふと気づいた。我が家の夫は帰宅すると「ただいま」に続けて大抵「腹減った」と言い、手を洗ってうがいをし、荷物を降ろし、台所に来て、鍋の蓋を開け、「旨そっ」とつぶやく。それを発するまでが帰宅後のルーティンとなっている。鍋の中身が張り切って作ったチキン煮込みでも、しょっちゅうテーブルに並ぶ肉じゃがでも、時間が無いときの定番・カレーでも変わらない。例え準備が遅くなり、作り始めたばかりで、水とジャガイモしか入っていなくても。何を作っているかさえ分からなくても。もはや条件反射。夫は鍋の蓋を開けたら「旨そっ」と反射的に言葉を発するようになっているのだ。料理を一口食べた後の「旨っ」も同じ。

 でも、これがもし「旨そっ」や「旨っ」ではなく、「またこれ?」「今日これかぁ」だったらどうだろう?ため息だったり、無言だったりしたら?間違いなく、私は「はっー!?」と頭の中で眉をひそめるには留まらず、イライラ妻へと豹変し、食卓には重苦しい空気が流れることだろう。例え、反射的な言葉だったとしても、私はその何気ない日々の一言に救われていたのだ。

 夕飯の献立を考えることが「名もなき家事」なら、この夫の一言は「名もなきねぎらい」ではないだろうか。「名もなきねぎらい」のおかげで、笑顔で食事を始められるし、何気ない会話が弾む。

 私の取り留めのない話をひたすら聞いてくれることもそう、義父母に直接頼みづらいことをさらりと代わりに伝えてくれることもそう、私にとっては「名もなきねぎらい」だ。

 料理、洗濯、掃除、目に見える名前のある家事をどうシェアするかに目を向けがちだし、もっと上手く協力し合っていきたい気持ちは山々だけれど、目に見えない「名もなきねぎらい」に気づくことも大切だ。我が家では、この「名もなきねぎらい」のおかげでイライラ妻の出没回数を大幅に減らすことができているのは間違いないのだから(笑)

ライター
原田 笑
原田 笑

原田 笑(はらだ えみ)
・フリーアナウンサー、セミナー講師
・島根県益田市在住
・2男2女の4人の子育て真っ最中

愛媛県出身。大学卒業後、TSKさんいん中央テレビへの入社を機に島根県にIターン。アナウンサーとして、ニュース番組のメインキャスター、地域情報番組のリポーターを務める傍ら、フィールドキャスター・ディレクターとして、ニュース・番組の取材、編集などに当たる。

第2子出産を機にフリーに転身。2017年4月からは、夫の実家がある島根県益田市に嫁ターン。2021年6月から2年間「TSK news イット!」のキャスターを担当。山陰両県を中心にリポーター、ナレーター、司会、セミナー講師として活動中。ママに向けた益田での新しい旅の形の提案や、ママにやさしいまちづくりに取り組む「益田ママリトリートプロジェクト」の代表も務める。

4人の子どもたちと田舎暮らしを満喫しながら、夫の両親の手助けに感謝しつつ、仕事に勤しむ日々。大好きなパンと和菓子店、カフェ巡りが休日の楽しみのひとつ。

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