コラム
2023.11.27

その日の為に・・・

「親バカになっても、バカ親にはならない」と、保護者向けの講演会等の時には、よく言う言葉です。我が子を可愛がる事は素晴らしいですが、過保護になりすぎて行き過ぎた行動や要求につながってしまうと、そこは違うのかなと思うのです。今日はそんな愛すべき子ども達へ届けてほしい様々な【きっかけ】をご提案したいと思います。

自分の子どもの頃は、よく叱られたもんです。何か悪い事をしたらもちろん叱られます。ちょっと冒険して危ない事になったら、それもまた叱られます。先生に怒られた!と泣きながら家に帰ると母からは「先生に怒られるような事をするな!」と、倍叱られた記憶もあります。ところが、この令和の時代になると【怒る・叱る】という事が、しにくい時代になっているようで、むしろ「褒めて伸ばす」という事や、「できるだけリスクを減らしてあげる」はたまた「苦労しないように」「恥をかかないように」「ケガしないように」「傷つかないように」など、とにかくマイナスな事を避けさせる傾向にあるようです。

もちろん、褒めて伸ばすようなやり方は賛成です。自分自身も怒られてナニクソという気持ち以上に、とにかく褒められたい!喜ばれたい!の気持ちが強い人間だったので、褒められることでさらに力を発揮して、より良い結果にもつながるという事は認識しています。しかし、後半のマイナスを避けさせる傾向にはちょっとした心配もしています。

我々大人も、様々な経験から得た物が学びや成長となり、自分が今何かを判断する際には非常に大事な部分になってきます。それは自分が経験し、その経験こそが説得力ある物にしているのですね。人からのアドバイスももちろん役立つことは様々ですが、自分の経験に勝るものはない、そんな気もしています。では、大人の指摘によりマイナスな事を避けていくと、どうなるでしょうか。

極端な話をしますと、「怒られた事がない人」「苦労せずに生きてきた人」「恥をかいた事がない人」「怪我した事がない人」「傷つかないできた人」そんな人が、いざ大人になり、社会に出たらどうでしょうか。否が応でもこの様な経験は待ち構えていると思います。そうなると、経験のない人は、打たれ弱く、心も弱くなり、自分が苦手と感じるとやらなくなってしまう事にならないでしょうか?インターネット調べにはなりますが、国が実施しているストレスチェックの調査によると、10代20代の心の病を抱える人の割合は年々増加傾向にあり、2019年には初めて3割を超える結果となっているようです。

もちろん、一概に「リスクヘッジ」の子育て論が原因とは言えないと思いますが、少なからず原因のひとつにはなっているのではないでしょうか?大人になり、社会に出た時に、初めて困難にぶつかり、対処法がわからず、免疫力もなく・・・という、誰かがなんとかしてくれる環境で育つと、独り立ちした時にとても大変な事につながりかねません。プロ野球で活躍し、メジャーでも大成功を収めた超有名な元野球選手もコメントを残しています。「指導者が厳しくする事が難しい時代。そうなると子ども自身が自分に厳しさを持たなければいけなくなる。昔は指導者からの厳しさがある事で、どんな子でもある程度の底上げは出来る。やらなければいけない場面が多いから。しかし、自分に厳しさを持てない子は、自然と伸びなくなる環境になっていってる」つまり、親や先生、指導者などの【厳しさ】で、平等に、ある程度の底上げは可能だった。しかし、今後は自分に甘い子が努力等をしなくなり、せっかくの伸びしろが伸びないままになってしまう恐れがある、という事なのですね。

もちろん、大前提として暴力や体罰は間違いなく不必要な物だと思います。個人的な経験としては、あの頃の鉄拳制裁により自分の甘えに気づかされ、反省し、乗り越えた!なんて事もありましたが。あくまでもこれは個人的な感想でして、理不尽な暴力や、感情のままで起こる体罰は断固反対です。

ただね、だからといって、子ども達の「経験」という、もっとも大切な財産を、大人のリスクヘッジの考えによって奪ってしまっている部分はありませんか?そりゃ泣いている姿、見たくないですよ。悩んでいる姿、見たくないですよ。傷ついてる姿、見たくないです。でも、泣いていても泣き止んで立ち直る強さは持ってほしい。悩んでも解決し、前に進む強さは持ってほしい。傷ついても成長し、また歩き出す強さは持ってほしい。あたしは、そんな気持ちもあるのです。

PTAをしていた頃、他人の子を注意したり、説明してわかってもらおうと話す場面もありました。すると親御さんから「もっと言ってやってください」という言葉をよく言われました。なんというか、その、う~ん、そうなのかな?って疑問に思う事も多々ありました。怒れない、嫌われたくない親というのも、出会ったことはたくさんありました。他には、すぐ手伝ってしまう親。筆文字の作品を書く時に、お客さんの子どもに質問したりする事があります。しかし恥ずかしいとか、人見知りが原因ですぐには答えられない子がいる事はわかっています。ただ、そんな時はほとんどの親が先に答えてしまって全部言っちゃうのです。あたしはずっと待っているんですが、親が待てない。本人から聞きたいから時間もあるので待ちましょうと思っても、親が待てず答えてしまう。そりゃこの子、いつまでも自分で言えないままになってしまうよ~!と、ツッコんだ事も多々あります。

ちなみに、その後コミュニケーションが取れて、その子どもと話せるようになり、再度質問すると、ほとんどが親の言っている事とは違う言葉が返ってきます。好きな色、込めたい気持ち、将来どんな道に進みたいか、今の趣味は、などなど。親も「えぇ?そうだったの?初耳!」なんて言われる事もありますが。ん~、ねぇ?ww意外と子どもの気持ちってそんなもんで。前にこんな事言っていたな、が、変わったりするものなのです。代わりに言ってあげる優しさより、言えるまで待ってあげる優しさもまた、厳しさの中にある愛なのではないでしょうか。あたしはそんな厳しさなら、あってもいいのかなって思います。

あたしは割と、子どもには厳しい方です。妻も厳しい面はありますが、基本は優しさ担当です。愛のある、飴と鞭作戦と言いましょうか。どちらもバランスよく時に厳しく、時に優しく、が、いいのかなと思ってそうしています。自分の子どもの頃、父も母もいる頃は、役割分担でバランスが取れていました。母だけの時は母から優しさも厳しさも教わりました。あたしが普通に育ったかどうかはわかりませんが、あたしは嬉しかったし、感謝しています。

大人になった時、社会に出た時、大きな壁にぶち当たった時、大きな穴に落っこちた時、大切な人と出会った時、そしていつか家族を持った時。そんな日の為にも、大切な子ども達には、リスク0、マイナスも0・・・ではなく、喜怒哀楽を経験して、感情も強さも思いやりも、自分の経験から学び成長してほしいと願っています。「失敗は成功の素」なんて言いますが、古臭くてもあたしは正にそうだな!と思っています。「倒れない事よりも、倒れてもまた立ち上がる大切さ」喜怒哀楽、様々なきっかけを子ども達に与えてほしいな、とあたしは思います。

皆様も、そんな愛情の届け方、いかがでしょうか?

ライター
TADA
TADA

即興書家 MC パフォーマー

1999年より千葉にて「あなたを見てインスピレーションで言葉を綴ります」という書き下ろしパフォーマンスを始める。2001年日本一周を決行。2002年以降は拠点を千葉→岡山→横浜→大阪と移し、2023年4月から日本海テレビ「おびわんっ!」(水木金MC担当)が始まった事をきっかけに単身移住。山陰地方のテレビやイベントを中心に活動。現在までに筆文字作品を書き下ろした人数はすでに15万人以上

学校訪問や講演会、自身の子どもが通う小学校でPTA会長を務め、高校ではPTA副会長を務める等、3児の父としての経験を活かし子ども達に関する活動も多数。特に無償でありながら、約6年継続している「中学校ラジオ企画 即興書家TADAのGood School」は、実際の中学校(現在は鳥取県の中学校3校で放送中)で、毎週火曜日の給食時間に放送され、中学生の声を受けリアルなメッセージに本気で応える内容がウケている

MC、書き下ろしパフォーマンス、筆文字デザイン、講演会、コラム、TVラジオ出演等、多方面で活躍中。特にメディアでは書家のイメージとはかけ離れ、明るいキャラクターも親しまれる魅力のひとつに。近年では国内だけにとどまらず「中国・韓国・フランスパリ・アメリカハワイ」等、海外でも活躍し、高い評価を得ている

CATEGORY

育児

家事

働き方