コラム
2019.11.15

大切な家族の輪。~必要なのは気づく事(後編)~

前編はこちら

 移住までの準備期間2か月は、当時の会社で責任のある立場だったため、迷惑をかけて辞めないためにはギリギリの期間でした。「最後を疎かにするようでは、これからペンション経営なんてとんでもない!」その思いで必死でした。家族となかなかな顔を合わす時間もないくらいに・・・。

 そして2か月後、「カッコ良く働いている姿を家族に見せて、自分を中心に家族の輪をしっかり固める!」そんな事を夢見てスタートしたペンション経営。しかし、初めての事ばかりでトラブルに次ぐトラブル。1人でできるはずもなく、妻と共に2人3脚。一日の仕事をなんとか終える頃には、既に日付が変わっている毎日でした。夢見ていたカッコ良い姿どころか、失敗して謝ったり、オロオロしたり。家族に見せたのはカッコ悪い姿ばかりでした。

 そんな私達に「気持ちの余裕」などあるはずもなく、家族を大切にするどころか、いつも「後回し」。結局、大阪にいた時と同じことを繰り返していました。

 そんな私達に気づいて、状況を変えてくれたのは子供達でした。私達両親の「不器用だけど一生懸命な姿」を見て、なんと、自ら「お手伝い」をしてくれるようになったのです。当時は長男が6歳、次男が4歳、長女はまだ2歳でした。もちろん小さな子供達ですから、「お手伝い」をしても時間がかかり、上手くいかない事ばかりでした。
でも「お父さん、お母さんを助けたい!」という強い気持ちで、絶対に最後まであきらめず、毎日毎日、一生懸命「お手伝い」をしてくれました。

 部屋の掃除やベッドの用意、食事の支度など、小さな体で「お手伝い」をしてくれる姿がいじらしく、気持ちがうれしく、私達は元気をたくさんもらいました。

 そのおかげで、私達夫婦に「気持ちの余裕」が生まれ、全てが良い方向に進み出しました。

 17年たった今でも、子供達は当たり前のように「お手伝い」をしてくれます。ペンション経営を始めた当時は3人だった子供達も6人になり、今では「座っていていいから。まかせて!」と言ってくれます。これは妻にだけですけどね。

 私にとっての「家族の輪」とは、「親が子供に一方的に何かを与えるのではなく、お互いに与えあい、もっと大きな力にできる輪。つまり相乗効果の輪である」と思っています。

 「これからもっともっと大きな輪に育つはず。」そう信じて、今日も妻と2人で「行ってらっしゃい」と子供達を送り出します。夢を育む大山で。

ライター

子供と泊まる宿「エルモンテ&キャンディハウス」オーナー
稲垣 文彦(イナガキ フミヒコ)
出身地:大阪(現在:鳥取県の大山在住)
子供達:22歳の大学4年、20歳の大学2年、17歳の高校2年、13歳の中学1年、11歳の小学6年、9歳の小学4年の6人。子供達は、水泳やアーチェリーで全国大会や国際大会で活躍中

経歴

大学在学中に、夜間のアパレル専門学校に通い、大学卒業後は家業のアパレルメーカーに勤務。さらに、グラフィックデザイナーとなるため、働きながら夜間のグラフィック専門学校に通い、大阪のメーカーで企画開発兼デザイナーとなる。
その後、「家族との時間」を大切にするため鳥取に移住し、ペンション経営を始める。
当初から「家族連れ中心」のコンセプトだったが、10年前から「家族連れ限定」をコンセプトに変え、子供と泊まる宿「エルモンテ&キャンディハウス」に改名。
宿のほとんどがデザイナーであるオーナーの手作り。
「子供が小さな頃から家族で安心して楽しくお泊りしたい」との声を大切に、今日もお客様を迎えています。

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