コラム
2019.11.25

でこぼこ道を行く

 お互いに働く時間や場所が不規則で、物忘れが多いという私たち夫婦。最近「しゃんしゃん傘踊り」を歌うようになったイヤイヤ期真っ最中の息子とドタバタ楽しい毎日を過ごしている。

 ワークライフバランスといえば夫婦での家事分担も大きなテーマ。我が家では “家事分担のルール化”はしていない。ルール化を優先すると、相手への期待値が高くなりすぎたり急なスケジュール変更への対応が面倒だったりしそうな気がするし、何よりどうしようもないことに、忘れっぽい二人はルールも忘れがちなのである。これは我が家には向いていないに違いない。

 基本的に家事は私が担うが、状況によってできる方がその日できることをやるので、料理や洗濯など、日によって担当が変わる。二人とも帰りが遅くなって夕飯は簡単に、ということもある。仕事が不規則で忘れっぽい、計画通りに家事をするのが難しい私たち二人が得意なことといえば、臨機応変に柔軟に、工夫して楽しむことだろうか。もともと自炊をしていた夫だが、最近はまた料理の腕を上げてきた。次の課題は料理のスピードアップらしい。そして私は食リポで鍛えたボキャブラリーで夫の料理を褒めるのである…。

 夫と私はよく話す。息子が寝た後などに二人であれこれディスカッションしていたら何時間もたっていた、なんてこともしばしばだ。中身は相変わらず縄文人の話から働き方、政治、二人で考えているプロジェクトや大好きな息子のことなど様々だけど、いろんな話の中で我が家の進みたい方向やお互いの状況を把握し、気持ちもシェアできている気がする。

 毎日お互いができる家事育児を確認し、できなくても責めない、というか責めることはできない。その分ご飯が手抜きになったり部屋が散らかったりするけど、相手の状況もわかっているので完璧を求めることはしない。たくさん話し合って、試してみて、うまく行ったり行かなかったりを繰り返しながら今いるのがここだ。

 お互いに忙しい分、息子の話をちゃんと聞いたりスキンシップをとったりする時間を作ることは大切にしている。母である私に息子が甘えたい時間は、それが洗濯物を干していた時だとしたら、夫がすぐに交代してくれたりもする。このバトンタッチも4×100メートルリレーの日本代表並みにスムーズ且つスピーディーになってきた。そうやって生まれる息子の笑顔を二人で眺めるという小さな幸せを重ねながらチームワークを磨いている。

 家庭によって千差万別が当たり前の生活スタイル。我が家では臨機応変であること、柔軟であること、さらに相手の状況をおもんばかる想像力が必須の要素だ。でこぼこ道を歩いた方が足も体幹も鍛えられ、感覚も磨かれる。手を取り合って歩けば転びにくい。ワークライフバランスという課題への答えなんてない。何が起こるかわからないことは“ワクワク”と捉え、お互いの苦手を補う工夫を楽しみ、完璧を求めずに“余地”を伸びしろにして家族として成長していくのが私と夫の歩き方。家族の時間を大切にしてこそ生まれる感性を仕事にも活かしていきたい。

ライター
奈羅尾 玲子
奈羅尾 玲子

鳥取県若桜町出身。特殊メイク・特殊造形を学ぶため高校卒業後に渡米。The Art Institute of Pittsburghで学士号を取得後、ピッツバーグを拠点に映画、舞台、ハロウィンなどの現場で経験を積む。帰国後、日本海テレビの情報番組「スパイス!!」でリポーターとして起用されたのをきっかけにタレントのキャリアをスタート。

現在はメインMCを務める「スパイス!!」をはじめ、CMや各種動画、イベントなどに出演しつつ、日英バイリンガルナレーターとして国内外に声を届けている。今年はアメリカのVoice Arts Awards 2023にノミネートされるなど活動の場をローカルにもグローバルにも広げている。

2014年に結婚、2017年と2020年に男の子を出産。目下の興味は、民俗学、文化人類学、縄文時代などを通してみる人間の普遍的な思考や信仰。畑は4年目。最新のDIYは二人目をお腹に抱えて作った自宅録音ブース。

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